「日本ではボート作る人の数は多いの?」って聞かれます。これはもう「多いってのをどう定義するかによるよね」としか答えようがありません。「じゃアマチュアビルダーの数はどうよ?」。増えてると思います。カヌー製作教室を始めているところは数件あるし、数も増えています。たまたまですが、数日前にもきれいなセイリング・カヌーを自作している人からメイルを受け取りました。彼はストリップ・プランキング手法での自作の過程を
ウエブに公開しています。ラプストレーキ手法の人には、このマガジンでも紹介されたGLラボというサイトがあり、かなりアクセスのある掲示板を持っています。そして、どんな舟が造られているかっていえば、カヌーが一番人口が多くって、小型のセイルボートがかなり離れてニ番目、たまにクルーザーを作る人もいる。そんな人口分布でしょう。

ぼくはボートの制作方法は様々の情報源から学びました。日本ではメイン州のウドゥンボート・スクールのようなワークショップはありませんし、西洋の伝統的な木造小型船の手法についてはあまり情報もありません。本が一番の助けになりました。シャペル、レーザー、マッキントッシュ、ガードナー‥だから、これらの人たちは大大先生たちです。なかでもバリー・トーマスの書いた小さな本「ハレショフディンギーを作る」には強く惹かれました。ハレショフ製作所でのディンギーの製法を書いた60ページほどの小さな本です。バリーがハレショフ製作所最後の職人から聞いたこと、それをもとにしてミスティック博物館でディンギーのレプリカを作った事が基になっています。文章は技術の後ろにある職人の心をうまく伝えていて、製作時の雰囲気を感じさせてくれる不思議な魅力を持った本です。この本に影響されてボート製作を始めたのかもしれません。ちなみに本は昨年翻訳してビレッジプレスから出版いたしました。



グレッグ・ラッセルの「ビルディング・スモールボート」も参考になった本です。本棚で一番多く参照されている本かもしれません。グレッグの語り口はほんとうにうまくって、それで彼のクラスを受けてみようと思ってウドゥンボート・スクールにも行ったわけです。余談ですが、ウドゥンボート・スクールはなかなかお勧めできるところです。クラスはもちろん、わかりやすくって、すばらしいのですが、クラシック木造艇のフリートがあって、クラスのあとに好きなのに乗り放題、ビートルキャット、ハレショフ12-1/2、ノースヘブンディンギー‥と毎日、博物館ものの名艇でイブニングセイルが楽しめるのです。これはほんとうに楽しかった‥
海外の博物館も貴重な情報源です。ミスティークのような博物館ではインターネットを通じて、収蔵しているボート図面のコピーサービスを提供してくれていて、これは外国に住むビルダーには大きな福音です。製作はほとんどが古いボート図面を基にしています。ラシュトン、セントローレンス・リバー・スキッフ等、19世紀中頃から20世紀始めのころの小型船が好きで、ラプストレーキの手法で作っています。ラプストレーキは船体のラインを美しく強調するのが好きです。製法は木に銅のネイルを使った古典的な手法が好きです。心が安まるじゃないですか。化学物質のことや、接着温度など考える必要はありません。サンディングの粉塵に悩まされる事もありません。
制作方法は特に異なったところはありません。もちろん工具箱には日本の大工道具が揃っていますが、そればかりと言うわけじゃありません。西洋かんなはよく使います。ハンドツールをよく使う方ですが、バンドソウも、ルーターも使います。スポークシェーブは必要不可欠ですが、これは日本の大工道具にはありません。
たしかに ハンドツール好きな人にとっては日本はまだ天国のようなところがあって、合わせがねの手打ち鑿や、かんな等、職人仕事の道具類がごく普通に市場で見かけられます。これらの道具の刃は堅い鋼と柔らかい鉄との2層が合わさって出来ていて、とてもよく切れます、研ぎやすく、切れも長もちします。
専門店では十数万円もするようなかんなが普通に売っていて、もったいなくって使えないほどすばらしい工具が揃っています。古代製法の鑪鐵を使った刃があります。裏打ちの鐵には20世紀始めの頃の英国の船のいかり用の鎖が用いられたりします。かんなのマニアの人たちのグループがあってかんな削りコンテストが行われています。たしか記憶では5ミクロンほどの薄さ、50メートルほどの長さが記録だったと思います。
プランク材としては杉やヒノキを使います、杉はレッドシーダーに近い感じのシーダーですが、柔らかくって粘りがあります。ヒノキはサイプレスと訳されていますが、むしろイースタンホワイトシダーにすこし似た感じで、結構粘りがあります。スチームで極めてきれいに曲がります。和船大工も同じような木を使います。ちなみに伝統的な和船では川船はペイントしません。だからインチほどの材を曲げて合わされたプランクは年に1ミリずつほど減っていき、ある程度薄くなったときがその船の寿命だそうです。
*http://www012.upp.so-net.ne.jp/kane-toku/toku_index.html
**http://www.gl-labo.com/
*** http://minamiizu.net/herreshoff/
Koji MATANO (Timberline Small Craft) Before working with boats, Koji was a glassblower and still has ties with that craft. He helps a friend organize an annual glass festival/workshop on Nijima island every year.
© Copyright 2006 by Koji MATANO
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